電話相談サービスにTwilioを活用し 約1.8億円のコスト削減と ユーザーの利便性向上を両立
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通話システムの入れ替えに伴いTwilioの導入を検討
恋愛、仕事、お金、人間関係...人生にはさまざまな悩みが常に付きまといます。インターネット上に答えを探しても見つからないとき、有識者のアドバイスを求めたくなることもあるでしょう。ポータルサイト、 検索エンジン、ニュース、エンタメなどさまざまなコンテンツを提供す るエキサイト株式会社では、電話・メールによる相談や占いができるサービスを展開し、ユーザーの悩みに寄り添っています。これらの電話相談サービスにおけるTwilio導入の経緯について、エキサイト株式会社取締役の秋吉正樹氏に伺いました。
「『exciteお悩み相談室』『excite電話占い』 という2つのサービスで利用していた通話システムのサポート期限が終了することから、 リプレイスを検討していました。これらのサービスでは、ユーザーがweb上でカウンセリングを申し込むと、基幹システムが接続先を通話システムにAPIでリクエストし、相談員の電話番号に着信します。相談員が着信に応答することで、ユーザーの登録電話番号に着信し、音声通話がスタートするという仕組みで匿名通話を行っています。
従来のシステムではユーザー側はかかってくる電話を『受ける』以外の選択肢がなく、また国内の固定・携帯電話にしか対応 できない状態でした。この仕組みでも大きく支障はありませんでしたが、ユーザー側から電話を『かける』という選択肢も選べることで 、電話を待つストレスなくご利用いただける状態にしたいと考えてい ました。 また、従来型の通話システムには同時接続数の制限があり、スケールするには設備の拡張が必要です。サービスの成長が加速するほど見直しのスパンも短くなり、コストがかさむ点が問題になっていました。さらに固定電話よりも携帯電話でのご利用が多く、 割高な携帯電話への接続もコスト高につながっていました。 その他にも、『通話時間』 と 『現在通話中のセッションを確認する』以外に通話の詳細を把握することができず、通信不良時の原因究明やサポートが困難でした。」
大幅なコスト削減と、サポート品質向上に成功
「これらの問題を解決するために、既存の通話システムの代替としてTwilioを採用しました。メインとなる通話機能や録音・自動音声通知にはTwilio Programmable Voiceを利用し、アカウントに対する電話番号の認証にはTwilio Verify、請求内容や督促の通知にはTwilio Programmable SMSを導入しています。Twilio導入後、ユーザーはカウンセリング申し込み後に表示された番号に自分で発信するか、専用アプリの着信を受けるか選択できるようになりました。専用アプリでの通話はVoice SDKを利用したデータ 通信による低コストなIP通話。このユーザー発信とアプリ着信を採用した効果はとても大きく、通話コストの大幅削減につながっています。また、Twilioはスケーラブルな従量課金制のクラウドサービスであることから、イニシャルコストや設備拡張のためのメンテナンス費用が削減できたこともポイントでした 。年平均でコストを従来比の約30% 程度に抑えることができ、切り替え後 2 年間で約 1.8億円の削減を達成しています。 もうひとつ大きな効果が、通話におけるサポートの強化です。通話イベントがwebhook※1で通知されるため、通話分数をリアルタイ ムで割り出し終話後すぐに請求額の確定・精算が可能に。またRequest InspectorやVoice Insightからキャリアの特定、電話が鳴った時間、どちらが応答したのか、通話品質や通話の有無などを確認できるようになり、的確にユーザーや相談員のサポートがで きるようになりました。」
※ 1 : HTTPリクエストで着信、応答、切断などのイベントが指定の通知先に送られるもの
エンジニアフレンドリーなTwilioでの開発はスムーズ
「 Twilioのコスト削減効果や今後の拡張性の高さに期待して導入を決定しましたが、開発のしやすさにも優位性を感じています。 Twilio DocsとしてAPI情報が公開されており、各種言語のSDKやチュートリアルが用意されているため、開発エンジニアにとって検証がしやすい環境が整備されています 。サービスの根幹にかかわる 開発のため慎重に進行したことや、複数のサービスに展開したこともあり、全体では8カ月程度かかりましたが、検証用のプロトタイプであれば1名で2か月程度と短期間で開発できています。 アカウントに登録する電話番号の確認のため Verifyも導入しましたが 、実装の難易度はかなり低いと感じました。ユーザーの入力に従って順番にAPIを呼び出すだけという、非常にシンプルで扱いやすい印象です。」
生成系AIなど最新テクノロジーを活用した展開に期待
「コミュニケーションの延長として、Twilio Videoの活用や、通話中にアナウンスを流すことができるconference機能(同時通話) など、ユーザーにとって有用な機能追加も今後柔軟に検討していきたいと考えています。また、TwilioのCustomer AIによって、ユー ザーと相談員間の相談品質の向上を図る仕組みづくりにも期待しています。当社ではChat GPTなど生成系AIを活用したシステム開発支援に取り組んでおり、自社サービスへも積極的に取り込んでいます。当社では全社横断的にバーチャルなエンジニアの組織を設けており、日ごろから積極的に情報交換を行っています 。今度もAIをはじめ最新のテクノロジーを活用し、サービスの改善や新規開発に取り組んでいきます。」